三日月と狼
交錯する想い
花澄はまず仕事をしなければと思った。

出来れば正社員になりたいが、
社会人としてブランクもあれば、スキルもない花澄をいきなり正社員として採用してくれる会社などあるとは思えない。

何より仕事に復帰する自信がなかった。

パートとして職種や条件を選ばなければかなり仕事はある。

パソコンが苦手なので事務職は初めから除外した。

他にも飲食店や販売員など接客の仕事も昔、一度経験したがその時に嫌な思いをして苦手な職種だ。

その他、工場などのライン作業の仕事も候補に入れたが場所が遠く通うのが大変だった。

花澄が見つけたのは早朝と深夜の少し時給の高い時間帯を募集していた清掃会社のパートで
ヒロの家から比較的近い場所で働くことが出来た。

掃除すればいいだけだと甘く考えていたが、
覚えることは沢山あって
久しぶりに働く花澄にとっては慣れるまでが大変だった。

朝早くからお昼まではショッピングモールの清掃でそれが終わると
家賃の代わりにヒロの家で家事をこなして、
少し眠ってから夜はパチンコ屋の清掃の仕事に行った。

慣れない仕事と不規則な労働時間で
花澄はかなり疲れていたが
帰るといつもケイが待っていて
花澄にマッサージをしてくれたり
DVDを一緒に観たりした。

花澄は生活するのが大変で家を出たことをたまに後悔したが、
ケイの顔を見るとここで暮らせて良かったと思う。

ケイと知り合ってなかったら
自分はまだあの家で将輝に何も言えず
申し訳ない気持ちで生活していただろう。

それにしてもケイとはあれから何一つ進展しない。

ケイはいつも優しくて、花澄はその優しさを時々勘違いするが
このままでは男と女には一生なれない気がした。

そしてその夜も仕事に向かった。

空を見上げると三日月が雲の隙間から見えた。

花澄は将輝のことを思い出した。

将輝はどうしているのだろう?

他に好きな人が出来るだろうか?

ふと将輝の肌を恋しく思う。

こうしてたまに出てきた事を後悔しながら
花澄は目の前の仕事をする事でその思いを打ち消した。

そして清掃の仕事が終わり、
外へ出るとそこには意外にもヒロが立っていた。





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