三日月と狼
「え?ヒロさん?」
ヒロは寒そうにコートのポケットに手を入れて
そこに立っていた。
「お腹すいてない?」
と疲れた花澄を癒すように優しく笑顔で聞いた。
何故かはわからないが、ヒロの笑顔を見ると花澄は元気になる。
「どうしたの?」
「ん?腹減って…ラーメンでも食べようかなぁと思ったら…花澄ちゃん、もう仕事終わる時間かなってちょっと寄ってみた。」
だけど鼻は真っ赤で寒空の下でかなりの時間待っていたように感じた。
「ヒロさん、手を出して。」
「え?」
ヒロは不思議そうな顔をしてその手をコートのポケットから出した。
すると花澄が突然その手を自分の手で包んだ。
ヒロは鼓動が速くなり、自分の顔が赤くなるのがわかった。
こういう時の花澄は小悪魔みたいな女だとも思えるが
花澄のことが好きなヒロはそんなところすら堪らなく愛しく思えたりもする。
「やっぱりすごく冷たい。
結構待ったでしょ?」
花澄がヒロの顔を覗き込むとヒロは堪らず花澄を抱きしめた。
「寒いから花澄ちゃんがあっためてくんない?」
「え?」
花澄は少し驚いたがヒロからは微かにお酒の匂いがした。
「何言ってるの!ヒロさん酔ってるでしょ?」
花澄は酔って戯れただけだと思い、優しくヒロの腕を解いた。
ヒロはそれ以上攻められなかった。
花澄の気持ちを知っているからだ。
花澄が思ってるのは自分より若く美しいケイだということは花澄を見てればわかる。
「じゃあヒロさん、私と手繋ごう。」
花澄がそう言ってヒロの手を取り指を絡めた。
そして自分のコートのポケットに入れようとした。
ヒロはこれ以上そんな風にされたら、
気持ちを抑えられなくなりそうで
とっさに手を引いてその手を自分のコートのポケットにしまった。
花澄はヒロに拒まれて、自分の行動に少し呆れる。
スキンシップをするのは家に置いてもらっている手前、気分を損ねないようにヒロの気持ちを利用してるからだ。
ヒロはそんな花澄をたまに押し倒してしまいたくなるほど
想いはどんどん強くなり、抱えきれなくなっていた。
時には自分に振り向かない花澄の存在を憎いと思う時もある。
「花澄ちゃん、ホントに家、帰らなくていいの?
そろそろちゃんと話した方がいいんじゃないかな。」
明らかに意地悪な言い方だった。
花澄はヒロの言葉に少し元気をなくして
「うん。そうですよね。
ヒロさんには…迷惑かけてすいません。」
とヒロの顔を見ずに空を見上げた。
そしてまたその儚げな三日月を見て胸が痛んだ。
ヒロは寒そうにコートのポケットに手を入れて
そこに立っていた。
「お腹すいてない?」
と疲れた花澄を癒すように優しく笑顔で聞いた。
何故かはわからないが、ヒロの笑顔を見ると花澄は元気になる。
「どうしたの?」
「ん?腹減って…ラーメンでも食べようかなぁと思ったら…花澄ちゃん、もう仕事終わる時間かなってちょっと寄ってみた。」
だけど鼻は真っ赤で寒空の下でかなりの時間待っていたように感じた。
「ヒロさん、手を出して。」
「え?」
ヒロは不思議そうな顔をしてその手をコートのポケットから出した。
すると花澄が突然その手を自分の手で包んだ。
ヒロは鼓動が速くなり、自分の顔が赤くなるのがわかった。
こういう時の花澄は小悪魔みたいな女だとも思えるが
花澄のことが好きなヒロはそんなところすら堪らなく愛しく思えたりもする。
「やっぱりすごく冷たい。
結構待ったでしょ?」
花澄がヒロの顔を覗き込むとヒロは堪らず花澄を抱きしめた。
「寒いから花澄ちゃんがあっためてくんない?」
「え?」
花澄は少し驚いたがヒロからは微かにお酒の匂いがした。
「何言ってるの!ヒロさん酔ってるでしょ?」
花澄は酔って戯れただけだと思い、優しくヒロの腕を解いた。
ヒロはそれ以上攻められなかった。
花澄の気持ちを知っているからだ。
花澄が思ってるのは自分より若く美しいケイだということは花澄を見てればわかる。
「じゃあヒロさん、私と手繋ごう。」
花澄がそう言ってヒロの手を取り指を絡めた。
そして自分のコートのポケットに入れようとした。
ヒロはこれ以上そんな風にされたら、
気持ちを抑えられなくなりそうで
とっさに手を引いてその手を自分のコートのポケットにしまった。
花澄はヒロに拒まれて、自分の行動に少し呆れる。
スキンシップをするのは家に置いてもらっている手前、気分を損ねないようにヒロの気持ちを利用してるからだ。
ヒロはそんな花澄をたまに押し倒してしまいたくなるほど
想いはどんどん強くなり、抱えきれなくなっていた。
時には自分に振り向かない花澄の存在を憎いと思う時もある。
「花澄ちゃん、ホントに家、帰らなくていいの?
そろそろちゃんと話した方がいいんじゃないかな。」
明らかに意地悪な言い方だった。
花澄はヒロの言葉に少し元気をなくして
「うん。そうですよね。
ヒロさんには…迷惑かけてすいません。」
とヒロの顔を見ずに空を見上げた。
そしてまたその儚げな三日月を見て胸が痛んだ。