碧い瞳のシャイ
湖畔のお婆さん


お婆さんは

湖の辺のベランダで

椅子に座って景色を眺めていた

すぐ側にシャイが来ていることにも気付かずに

「彼のいる所、知ってるんだね」

お婆さんは振り向く

「あら、まあ…久しぶりね」

お婆さんは微笑んだ

「そんな所に突っ立ってないで、こちらにいらっしゃい」

シャイはお婆さんの隣に来て

お婆さんの手に前足を添えた

「三十年ぶりかしらね…名前は付けてもらったの?」

「うん…ぼくはシャイ」

「シャイ…良い名だこと」

シャイは碧い瞳で

淋しそうなお婆さんの瞳を見つめた

「彼の住む場所、知ってるのに…どうして行かないの?」

「心の声、聞こえるのよね…だったら分かるでしょ…あなたは知ってて聞くんだから」

「それでも聞かせて…」

お婆さんはしばらくの間

黙って湖を見つめていたが

ようやく重い口を開く

「怖いのよ…」

「なにが?…」

「あの頃のわたしはまだ若かったから…歳の離れた彼を一途に愛してた…でも今はもう、お婆ちゃん…彼はきっと幻滅するわ」

シャイは前足を添えたまま

お婆さんの前に回った

「君こそ、もうわかってるはずだよ…君と彼はそんなんじゃなくて、心で繋がりあってるんだって…」
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