オオカミ社長は弁当売りの赤ずきんが可愛すぎて食べられない

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***


「「「す、すげぇえ!」」」
 明彦さんに貰った箱を開けた瞬間、三つ子たちが歓喜の声を上げた。
 ……え!? 凄い量!!
 だけど、驚いたのは私も同じ。
 大きな箱はずっしりと重かったが、それもそのはず。中にはなんと、ケーキが二十個も入っていた。
「ねえちゃん、こんなケーキいっぱいどうしたの!?」
「なになに!? 今日って、誰かの誕生日だっけ!?」
「コレ、いつもの100円ケーキと違くない!? もしかして100円ケーキ、リニューアルしたのかな!?」
 三つ子はキラキラとした目でケーキを見つめ、思い思いの感想を口にする。
「三郎、馬鹿か! これのどこが100円ケーキだよ!」
「そうだぞ! いちごショートの上のいちご、ジャムじゃなくて本物だぞ!? しかもまるまる一個だぞ!? このケーキが100円なわけがあるか!」
「そ、そっかぁ! 100円じゃないケーキって、こんななんだ!」
 目の前の光景に、胸がグッと締め付けられる。
 ……ごめんね。いつも、100円ケーキしか食べさせてやれなくて。それだって、誰かの誕生日とクリスマスにしか買ってやれない。
 だって、100円あったらもやしが三袋買える。おかずが一品、出来上がる。
「……誰の誕生日でもないんだけど、お土産にいただいたの」
 込み上がる胸の痛みを堪え、なんとか笑みを貼り付けて答える。
「誰だよそんな太っ腹の土産なんてくれんの!?」
「うちにそんな気前のいいお客なんていたっけか!?」
 すると三つ子たちから、これまた答えにくい質問が降って来る。
「……未来のお兄さんだよ」
 なっ!?
 私が答えに悩んでいる隙に、隣の葉月が衝撃的な台詞を告げた。
 私はガバッと葉月を振りかぶるが、当の葉月はどこ吹く風で、涼しい笑みを浮かべている。
「「「未来のお兄さんってなに!?」」」
 三つ子たちの声が揃う。
「ねーねー、ねえちゃん?」
「未来のお兄さんってなんの事?」
 え、えっ、えぇえええ!?
 三つ子が私の袖を引き、口々に問いかける。チラリと葉月に目線をやるも、爆弾投下の張本人である葉月は、今度は俺には無関係とばかりに無視を決め込む。
 どころかサッサと取り皿を用意して、ケーキを取り分けはじめているではないか!
「コ、コホン。なんの事だろうね? ねーちゃんにもよく分かんないな~。と、とにかくケーキは、親切なお客様がくださったの! それにしたって美味しそうなケーキだね、早速食べようよ!!」
「「「食べるー!!」」」
 私の一声で三つ子たちの興味関心は、容易にケーキの出どころから、ケーキそのものへと移った。
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