ハイスペックなイケメン部長はオタク女子に夢中(完)
31.中華街デート

急いでお気に入りの辛子色のスカートと黒のタートルネックに着替え、鎌倉へ言った時と同じ茶色のミニブーツを履いて、焦茶色のコートを羽織って車に戻ると、

「早業だね。」と北見が笑った。あやめは助手席に乗ってから髪をゆるく編んで左側に来るようにまとめた。

「あやめって器用だよね?」と言われ、

「そんなことないですよ。」と答えると、

「そんなことあるよ。おっとりしてそうに見えて、実はパパっとなんでもできちゃう感じ。」と北見が言った。

「そんなに褒めても何も出ませんよ。」とあやめが言うと、北見は笑って

「そうやって照れるところも可愛い。」と惜しげもなく言った。あやめが絶句すると、北見はあやめの右手を繋いで、

「やばいな、オレ今めちゃくちゃ幸せ。」と笑った。中華街までの道中は、色々な話をした。北見がデザインをやり始めたきっかけや、今までつくった作品のこと、支社出向中の話など、北見の話題はとても興味深く、面白かった。話を聞けば聞くほど、北見の凄さがわかって、あやめはなんでこの人が私の隣りにいるんだろう?と不思議で仕方なかった。近くの駐車場に止め、出された手に戸惑いながらも、あやめが手を重ねると、北見は本当に嬉しそうな顔をして、しっかりと繋ぎ直して何にしようか?と言いながら、点心のお店に入った。お昼のピーク時間は過ぎていたので、あまり待つこと無く店内に入り、色々な飲茶を二人で分けて食べた。北見は意外としっかり食べるタイプで、あやめの倍は食べていて驚いた。腹ごなしに二人でウインドウショッピングをして歩き、雑貨屋の前で、

「あれとかあやめに似合いそうだよね。」と北見が指した先にはチャイナドレスがあった。

「チャイナドレスってちょっとセクシーすぎません?」とあやめが言うと、

「あやめがあれ着たら、多分オレの理性は一瞬でぶっ飛ぶね。」と言った。あやめが、

「予想以上にスリット深いから、ホントに気をつけないとすぐ下着が見えそうでひやひやするんですよね。」と言うと、北見は驚いた顔で、

「あやめ、着たことあるの?」と言った。あやめは、しまった…と思いながら、ここまで言って隠せるわけがないと思い、

「はい…イラスト仲間に頼まれて、何回か絵のモデルみたいな感じで着たことあります。」と答えると、

「イラスト仲間って…男もいるの?」と北見が言った。あやめは、

「学生の頃は男の子も居ましたけど、最近集まってるのは女ばっかりです。」と答えた。

「最近も着たの?」と聞かれ、あやめは少し焦りながら、

「まぁ、一年くらい前ですけど…。」と答えた。北見は目を輝かせて、

「見たい。」と言った。あやめが

「嫌です。」と即答すると、

「えー。何で?いいじゃん。見るだけだから。ってか、今ここで試着して見せてくれても良いんだけど。」と言った。あやめが

「無理です。」と被せ気味に即答すると、北見は笑って、

「残念だなー。ってか、あやめの気が変わるかもしれないから、一応買っとこうかなー。」と言った。あやめは、北見を必死で止めて、何とか店を出た。歩きながら、イラスト仲間との話を色々と聞かれて、正直に話すあやめに、北見は少し引くんじゃないかな…と思っていたが、予想外に

「良いなー、そういう趣味を共有できる仲間が居るのって」と言った。あやめは思わず、

「ちょっと引きません?」と聞くと、北見は大きく首を横に振って

「全然。楽しそう。むしろ混ぜて欲しい。」と言った。あやめは

「無理です。北見部長があの会に行ったら、大変なことになります。」と言った。北見が

「何で?」と聞くので、

「間違いなくモデルとして色んなコスプレ頼まれますよ。」とあやめが言うと、北見は笑って、

「あやめと二人でカップルモデルなら喜んで引き受けるけど。」と言った。あやめは、

「無理です。」と即答した。北見は笑いながら、

「そういうだろうと思った。」と言った。中華街を抜けて、横浜の街を少し二人でブラブラと歩いてみて、あやめは思ったほど気負いなく、自然体で北見に接することが出来た。肩書も見た目も忘れてという倉本の言葉は、魔法のようにあやめの心に収まったのかもしれない。北見がイケメンなのは変わりないし、隣りにいてドキドキすることにも変わりはないが、隣を歩いていると、それほど顔を見なくても良いことに気がついた。

帰りの車の中で、

「歩き疲れただろうから眠ってもいいよ。」と北見は言った。あやめは、ただでさえ遠くまで運転してもらい、食事の支払いも全て北見がしてしまっていたのに、眠るなんてとんでもないと思った。何かお礼に出来ることがないかと考えていると、

「あやめ、まだ時間大丈夫?」と言った。あやめが頷くと、

「晩飯、何か食べたい物ある?」と北見が聞いた。あやめは、少し考えて

「特にないですけど…。」と答えると、

「まだあんまりお腹空いてないか。じゃぁとりあえず、家の近くまで行ってから決めようか。」と北見が言った。あやめは、フと今日買った食材を思い出して、

「あの、もし良かったら、私作りましょうか?」とあやめは言った。北見は

「え?」と驚いた声を出した。

「お昼もしっかりごちそうになってますし、よく考えると食材、冷蔵庫に入れたままなんで、もし良かったらお宅のキッチンをお借りして…と思ったんですけど、ダメですか?」と言うと、

「オレはすっげー嬉しいけど、あやめ、疲れてない?」と聞いた。あやめが大丈夫だと言うと、北見は嬉しそうな顔をした。
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