剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
「それがね、噂ではドゥンケルの森の入口付近で会えるんですって」
「本当? でもあそこって前に誰か亡くなっているんでしょ?」
「そんなことを言いだしたらきりがないわ。それにね、私ドリスが森の入り口の方に向かっていくのを見たのよ」
出てきた人物の名前をセシリアは頭に刻み込んだ。共通の知り合いなのだろう、彼女の名前に相手の娘の口調もやや興奮気味になる。
「そういえば、ドリスって最近痩せたし、色白で綺麗になったって評判よね!」
「ね、きっとアスモデウスに見初められたのよ」
口元に手を当て声を抑えようとするも、令嬢たちの噂話は加速していく。なにげなくセシリアが尋ねようとしたところで別の方向から声が飛んできた。
「それだけじゃ、アスモデウスの仕業だとも言えないんじゃないか? 彼女がなにかしら努力をしたのかもしれない」
声の主は男性のものだった。セシリアを含め女性たちの視線が一気に彼に集中する。
仮面をつけているので素顔はわからないが、青みがかった黒髪、落ち着いた低い声。背も高く、顔の造形からそれなりに美青年なのが雰囲気で伝わってくる。
白いシャツに黒のウエストコートと同色のブリーチズは両方とも裾が長めのものを着用しており、清廉さはあるが派手さはない。
一瞬、男に見惚れていた女性だが、彼の指摘にぐっと言葉を詰まらせた。そしてやや早口で反論する。
「本当? でもあそこって前に誰か亡くなっているんでしょ?」
「そんなことを言いだしたらきりがないわ。それにね、私ドリスが森の入り口の方に向かっていくのを見たのよ」
出てきた人物の名前をセシリアは頭に刻み込んだ。共通の知り合いなのだろう、彼女の名前に相手の娘の口調もやや興奮気味になる。
「そういえば、ドリスって最近痩せたし、色白で綺麗になったって評判よね!」
「ね、きっとアスモデウスに見初められたのよ」
口元に手を当て声を抑えようとするも、令嬢たちの噂話は加速していく。なにげなくセシリアが尋ねようとしたところで別の方向から声が飛んできた。
「それだけじゃ、アスモデウスの仕業だとも言えないんじゃないか? 彼女がなにかしら努力をしたのかもしれない」
声の主は男性のものだった。セシリアを含め女性たちの視線が一気に彼に集中する。
仮面をつけているので素顔はわからないが、青みがかった黒髪、落ち着いた低い声。背も高く、顔の造形からそれなりに美青年なのが雰囲気で伝わってくる。
白いシャツに黒のウエストコートと同色のブリーチズは両方とも裾が長めのものを着用しており、清廉さはあるが派手さはない。
一瞬、男に見惚れていた女性だが、彼の指摘にぐっと言葉を詰まらせた。そしてやや早口で反論する。