剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
 こんなにも胸が痛むのは、きっと思い出させるからだ。ルディガーとエルザを見ては、遠巻きに地団太を踏むしかできなかった子どもの頃の自分を。

 彼とは対等ではないと思い知らされ、自分の非力さにほぞを噛んでいた。

 今はルディガーの副官として自分の立ち位置も役割もしっかりと認識し、それなりの働きをしていると自負だってしている。それなのに。

 守っているつもりで、守られているのは……そばで支えようとして、支えられているのは……。

『彼は自分のせいで兄を奪ったからって責任を感じてその妹につきっきりだって』

 もしかして私の方なの?

「セシリア?」

 名前を呼ばれ、セシリアは慌てて我に返る。視線を向ければ見知った人物がいた。

「ジェイド。ブルート先生」

 テレサとジェイドが並び、ジェイドは見覚えのある荷車を引いている。おそらくテレサのものだろう。

「こんにちは、セシリア。どうしたの、こんなところで?」

 テレサに声をかけられセシリアは素直に答えた。

「ドリスとエルザさんのところへ行っていたんです」

「そうだったの。仲良くなれたみたいでよかったわ」

 テレサはぱっと明るくなる笑顔を浮かべた。目尻の皺が深く刻まれ目が細められる。

「おふたりは?」

「ああ。足りない薬草を取りに行っているところで出会ってな。ちょっと手伝っているんだ」

 セシリアはジェイドが引いている荷車に注目する。薬草だけにしては車輪の軋み具合からして重たそうだ。セシリアの視線の先に気づいたテレサがおかしそうに笑う。
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