バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
港のイベント会場からはバスで最寄り駅へ行くため、私たちはバス停に並んだ。
大きなイベントだけあって人も多く、長蛇の列ができている。
一回では全員乗れないななんて思っていると、ポツリと何かが頭にあたった。

「あ、雨。」

そういえば天気予報で“にわか雨に注意”って言っていたっけ。
まわりの並んでいる人たちもザワザワとし始める。
カバンから折り畳み傘を出している間にもどんどん雨足が強くなった。

「紅林さん、傘-。」

パンフレットで雨をしのいでいる紅林さんに声をかけると、濡れた前髪が色っぽく見えた。
こんなときにまでかっこいいだなんてときめいちゃう私は、もう完全に紅林さんの虜になっている。

「俺はいいよ。早川さんが濡れちゃうからちゃんと差しな。」

「ダメです。一緒に使ってください。」

強引に紅林さんの頭の上に傘を差すと、目元で優しく笑って傘をつかみ取られた。

「俺が持つから。」

あっという間に距離が近くなって相合い傘になる。
この状況、私が作り出したにも等しいけど、すごく近い。すごく緊張する。
これはボーナスステージでしょうか。
ああ、神様ありがとうございます。
だけど私がドキドキとときめいている間にも、雨足が弱くなることはない。
むしろどしゃ降りだ。
これは、もしやゲリラ豪雨というやつでは…?
バス早く来て!
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