バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
相合い傘だったのにときめいたのは短時間で、それよりも雨足の強さに気持ちが持っていかれてしまった。
バスは思ったより早く来て、よかったという思いともっと相合い傘していたかった思いがぶつかり合って、何とも言い難い気持ちだ。

傘を差していたにも関わらず、ずいぶん濡れてしまった。
タオルなんて持ってきていないのでハンカチで拭ってみたけど、あまり効果はなさそうだ。

バス内はクーラーなのか送風なのかがついていて、濡れた体を冷やしていく。
おまけに港から乗り込んだ人たちでぎゅうぎゅうだ。

「大丈夫?」

ふいに紅林さんが声をかけてくれる。

「はい、大丈夫……はっくしゅん!」

思わずくしゃみが出て、身震いした。
運転手さん、クーラー止めてください。
寒いです。

「結構濡れたね。ひどい雨だった。」

「そうですね。傘の意味があったんだかどうだか。とりあえず、もう止みそうな感じになっているのが憎いです。」

私はバスの外を見ながら言う。
先ほどの大雨はやはり通り雨だったらしく、外はもうだいぶ小雨になっている。
数分早くバスが来てくれていたら、こんなに濡れずにすんだのにな…。
内心悪態をついていると、突然優しく肩を抱かれた。
驚いて見上げると、紅林さんが困った顔をしている。

「冷えてるね。鳥肌が立ってる。早く着替えた方がいいね。早川さん、家はどこ?」

いや、すごくすごく冷えてるし寒いし服は濡れた部分が肌に張り付いて気持ち悪いしなんて思っていたけど、すべてが吹き飛ぶほど今私は頭が真っ白だ。

紅林さんが私の肩を抱いている。
その事実だけでお腹いっぱいですー。
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