バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
「あ、どうぞ。」

「ありがとう。」

大島さんがテーブルにトレーを置いて座ろうとすると、「ひとつずれろ」と声がする。
大島さんから視線を横に向ければ、そこにはトレーを持った紅林さんがいた。
紅林さんに言われてひとつ席をずれた大島さんと、私の前に陣取る紅林さん。
紅林さんが私に尋ねる。

「今日はひとり?」

「はい。いつもは先輩と一緒に食べるんですけど、先輩がいないときは一人です。」

「じゃあそういうときは一緒に食べよう。」

「いいんですか?」

「ちょ、俺は?」

「お前は一人で食べろ。」

「ひでぇ!」

紅林さんの大島さんへの扱いが雑すぎて、でもそれがとても仲がよさげで、二人のやり取りに私はクスクス笑った。
そんな私を、大島さんがニヤニヤしながら意味深な視線を投げ掛けてくる。
よくわからなくて首を傾げると、

「へぇ、仲良くなったんだね。作業長、急にメッセージアプリまで入れちゃってさ。俺が入れろって言っても入れてくれなかったのに。」

私と紅林さんを交互に見ながら、大島さんは冷やかすように煽ってくる。
そんな大島さんに、紅林さんは冷ややかな視線で答えた。

「…お前、早川さんには手を出すなよ。」

「マジかよ、よかったね早川さん。」

「えっ?えっ?」

きょとんとする私に、大島さんはひとり盛り上がり、紅林さんは黙々とご飯を食べていた。
私には意味がわからなかったけど、何だろう、心があったかい。
二人が笑っているので(正確に言うと大島さんが底抜けに明るくて紅林さんは目元で笑う感じ)、私もつられて笑顔になった。
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