夜のしめやかな願い

    *

毎朝、顔を洗った後に飲むことにしていた。

いつものように薬のシートを手に取ると、最後の一粒だ。

「あ」

呟きが口からもれる。

薬をもらいにいかなくちゃ。

そして気が付いた。

もう飲む必要がなかった。

“もう、来ない”と言われて、本当に来ていない。

もう、会わないってことなのだろうか。

お見合いをするとか言っていたから、二人だけで会うのはダメだろうし。

宗臣の横顔が浮かぶ。

自分の心が悪い方に傾く時、いつも浮かぶのは宗臣の顔だ。

ピアノを弾いている横顔。

自分にとっては、イコンみたいなものだ。

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