夜のしめやかな願い
「あ、桜ですね」
うふふと、とっさにお嬢様笑いをして、弓を滑らせる。
桜の花が舞いながら散る様子。
さゆりは遥か昔に見た情景を、目を閉じて思い浮かべる。
洋風の大きな屋敷の敷地にあった桜の大木。
桜のティーパーティー。
宗雅の同級生の家で開催されて、招待された3兄弟に連れられて行った。
まだ5歳ぐらいだったと思う。
大きな枝を伸び伸びと張り、桜の花が狂うように咲いていた。
その下に絵本で見たお茶会がセットしてあって、ふわっとした髪の毛の、大きな目をした女の子が迎えてくれた。
夢みたいな世界で。
木を見上げたさゆりに向って、花びらがふわりふわりと落ちてくる。