夜のしめやかな願い
「おまえ聞いているのか?」
啓にぎゅっと耳たぶを引っ張られる。
「聞いてます~。
ぽんじり食べさせてくださいよー。
啓さんのおごりなんで、しっかり食べておくんですから」
さゆりは掴んだ串を死守する。
「なに、いつ奢りって言ったよ」
「今です、今。
いいじゃないですか。
よっ、音楽教室一の稼げ頭」
「ま、そう言われちゃあな」
啓も酔っているらしい。
さゆりはくくくと笑いながら、ハツの串を手にする。
ここの焼き鳥の肉は臭みが無くて、やわらかくて本当においしい。
内藤3兄弟で、食べに行ったことのあるお店のように。
オミは今頃、何を食べているんだろう。
海外で美味しい物を食べられているんだろうか。
なんだか切ないじゃないか。
さゆりは焼酎の梅干し割を飲み干した。