夜のしめやかな願い
「よし!
がんばります」
突然気合の入ったさゆりに、啓は驚いて目を見開いてから、細めた。
「おう。
じゃ、今から練習するか?」
「いえ、帰ります」
さゆりは同じく力いっぱいで返答すると、立ち上がった。
「ごちそうさまでした」
ぺこりと頭を下げると、後ろで啓が何かを言っているのを無視して、さっさと店を後にした。
オミが学費まで出してくれて卒業できたんだ。
そして音楽に携わる仕事ができている。
なんて幸せなんだろうか。
鼻歌でも出そうなテンションでスキップをしていたが、その酔いもアパートにつく頃には冷めていた。
お風呂から上がった後、体が勝手に動いて、引き出しから預金通帳をとり出す。
さゆりは預金通帳を穴が開くほど見つめた。
いくら見つめたって、数字は増えやしない。
覚悟を決めると、スマホを手に取った。
「たーくん?
あのね。
お金貸してほしいの」