夜のしめやかな願い
*
「おまえだろう」
電話をとると、開口一番、それだった。
兄の苦り切った声。
「えー、だって、さゆさゆが可愛くお願いしてくるんだもん」
宗臣はイライラしながら、指でデスクを叩いた。
「で、何をバラした?」
「うーん、なんだっけな。
結構、前なんだよね。
それが突然、この間、飛行機代を貸してくれとか言われて、驚いちゃったよ」
「貸したのか?」
「もちろん。
上げようかと思ったんだけど、オミ兄が言っていたことを思い出したから、貸しにしておいた。
毎月5000円ずつ返してくる。
3年ぐらいかかるよね」
おかしそうに笑っている。
宗臣は遠慮なくため息をついた。