ぼくらは最期まで最初の恋をする
登校中に見える、県の名所の時計台。驚くことに、あと5分で遅刻の時間帯になってしまう。


「ちょっと悠斗どうすんの!?遅れるじゃん!」


怒りながら俺に詰め寄ってくる。…正直、可愛いとしか思えないんだけど、これ以上怒らせてもまずい。


「走る!」


全力で叫び、軽くアキレス腱を伸ばす。思い切り足に力を込めて走り出す。自分が出せる、トップスピードで。


「とまれぇー!!!」


と、背後から咲の怒鳴り声が聞こえた。まずい、あいつ走るの遅いんだった。俺が慌てて立ち止まると、咲がようやく追いつき、


「馬鹿じゃないの!?待っててくれた人置いてくとは何事!?」


怒らせないようにしたのに、火に油を注いでしまった。あーあ、まただ。俺は後先考えて動くのがとても苦手だ。勝手に体が動いてしまう。


「いや、悪気はないんだ。」


「その方がタチ悪いでしょうが!」

「ごめんなさい、返す言葉もないです。」


でも、こんなことをしている間にも、刻々と時間は過ぎてってしまう。そしたら怒られるのはしょっちゅう寝坊の俺じゃなくて、真面目に毎日生活している咲だ。それはさすがに申し訳ない。


「悪い、ちょっと我慢しろ。」


「は…?」


考えた結果、ふわりと咲を抱き上げると、そのまま全速力でダッシュ。野球部で鍛えられてるんだ。たいした負担にはならない。


「ばかー!!!!」


叫ぶ咲の声がしたような気がしたけど、聞いている暇はない。
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