ぼくらは最期まで最初の恋をする
ギリギリで、学校の門をくぐり、咲をそっと降ろす。と、
「うっ!?」
思いっきり蹴られた。しかもみぞおちに見事に入る。
そして咲は、そのままムスッとした表情で、教室に向かって歩いていってしまった。
「悪かったってばぁ…」
俺の悲痛な声は、空に吸い込まれるように消えていった。
でも、間に合ったから結果オーライだろう。そう思い、後を追いかけて教室に向かった。
「おー、悠斗、今日も絶賛ギリギリだね。」
「間に合えばいいんだよ、間に合えば。」
教室にはいるなり、同じ野球部の瑛太が嫌味を飛ばしてくる。野球しか取り柄のない俺とは違い、勉強もできて、男の俺から見てもイケメンで、リーダーシップもあって、それでいて腹が立つとは感じない。それは、瑛太の人柄がよすぎるだろう。俺の、1番の友達で理解者だ。
「で?今日の宿題はやってきてないんだろ、どうせ」
「宿題なんかあったか!?」
「しかたないなぁ、全く」
諦めたようにノートを出してくれる。俺が宿題をまともにやってきたことなんてないからだ。
なんて頼りになる友達だ!でも、毎回見せてもらうのも申し訳ないな。
「今度ジュース奢るから!」
満面の笑顔でそう告げるが、
「いいから。その代わりもう忘れんなよ。って言っても無駄か…」
呆れ顔に、ひょいと首をすくめる姿も、悔しいが決まっている。
「っ!?」
ぼんやりそんなことを考えていると、急に頭に激痛が走った。
「ん、どうかしたか?」
瑛太が、さっきとはうってかわって心配そうな顔で覗き込んでくる。だが、さっき感じた頭痛は嘘のように消えていった。
「いや、なんでもねーよ」
笑顔を見せると、再びノート写しに没頭した。そして、いつものように忙しく過ごしているうちに、頭痛のことなど、頭からすっ飛んでしまった。