初恋レモン
やっぱり無理しなくてもいいよ。


そう言おうとした時、


「…菜々の為だから。」


え…?


「正確には菜々と、菜々の家族の為。
困ってたら役に立ちたいって思う。
…好きな人だから尚更。」


そう言った海人君は
ほんのりと頬を赤く染めていた。


…なにそれ。


嬉しすぎて胸が苦しい。
照れてる海人君が可愛くて
抱きしめたくなる。
そんな事をする勇気はないから
思うだけだけど。


幸せを噛み締めていた私は
その場にぼーっと立ち止まっていた。


「ほら、何してんの。行くよ。」


さっき頭の上にあった手は、
私の前に差し出されている。


遠慮がちに手を重ねれば
ギュッと絡ませられた指。
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