冬の魔法
翌日の朝、自分の席でカバンから荷物を取り出し、片付けていると、横から「若竹さん」と声をかけられた。
「美影…私に、話しかけないで」
私に話しかけてきたのは、昨日の図書館で少しだけ話をした美影だった。
「なんでダメなの?」
美影は、笑顔で問いかけてくる。私は、考える間もなく、無表情で答えた。
「寝たいから」
美影は、笑いながら「寝たらいけません!」と言った。その言い方は、母にそっくりで。
「若竹さん、今日の放課後、時間ある?あるならさ――」
「うっとうしい!私に話しかけないでって言ってるでしょ!!」
美影に向かって怒鳴る。美影は、また寂しそうな表情をした。
美影は、「そうだったね、ごめん…」と謝り、突然、教室を飛び出した。
「若竹さん、怒鳴ること無いでしょ。気持ちは分かるけどさ…近藤くんが可哀想だよ」
たまたま近くにいたクラスメイトの1人が、私に向かって口を開く。
「そんなこと、関係ないでしょ」
「だから、友達が出来ないんだよ」と後ろの席の人が呟いた。
友達が居ないからって、何が悪いって言うの?と問いたくなった。しかし、私は問わず、教科書を机に出す。
「…美影、どこにいるんだろ」
無意識のうちに、そう呟いていた。なんで、こんな言葉が出たのか不思議で仕方ない。
私は心配になり、教室を飛び出した。