敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
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『君の愛想笑いは好きじゃない』という室長の言葉は、私を落ち込ませるには破壊的な影響力を持っていた。

おかげで昨日の夜は中々寝付けず、何度スマホを手にして電話をかけようとしたことか。

何とか室長と仲直りしたい。
といってもケンカをしたという訳じゃなく、私が一方的に呆れられたと言うのが正しいだろうけど。


「室長は昨日早退されましたが、その後風邪が悪化したとのことで本日はお休みされることになりました」


会ったらとにかく謝って、だけど私の事情も説明して、と思っていたけれど。

私の練りに練った計画は朝礼で室長がお休みと発表されたことで儚く消え去った。

やっぱり昨日熱があったんだろうな、と室長の額へ触れた右手をぼんやりと眺める。

昨日のは私が悪いかも、と冷静になった今は思う。
やっぱり阪井くんは私のことを本気というより軽い気持ちで誘っていたんだろうし。
それに同期だからと気遣わなくてもよかったかなあとも思う。

だって私、被害者だし。

大抵のことは自分が我慢したら笑ってやり過ごせる、と嫌なことでも笑ってごまかしてたことが多かった気がする。
揉め事が起きるぐらいなら私が我慢する、って平和主義、みたいな。

だけど心の底では納得してないからちゃんと笑えない、笑えてない。

それで愛想笑いとか言われて傷つくという負のループ。

やっぱり素直に生きるのが本当は一番なんだよね、きっと。

室長の言いたかったことってそれなんじゃないかな。
本当は傷ついてるのに無理矢理笑うな、って。
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