敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「あははは、薫、お前いつか刺されるんじゃないか?」
「殴られてやったんだから十分だろ。それに変に勘違いされても迷惑だ。万が一俺の素性が分かったとしても潰すだけだ」
「怖いよお前。女の子なんて適当に合わせてやればノリノリで抱かせてくれるのに」
「……お前も案外ひどいな」
「そうか?」
従兄弟が経営するバーで飲みながら、暁斗とこの類いの話をすると血は争えないといつも思う。
傍から見れば不特定多数の女性と遊びまくっていると思われるのかもしれない。
だが俺達は女を不幸にしかできない男と、その男のせいで不幸になり、子を愛せない女たちの元に生まれた兄弟だ。
そのせいか俺も暁斗も恋愛というものに否定的で、なおかつ結婚という互いを縛るシステムには向かないと信じて疑っていなかった。
だから今のところ女性と真剣に付き合おうとは考えもしないが、もしもこの先、大切にしたいと思う女性に出会った時はどうしたらいいのだろうと漠然と思っている。
なぜなら自分は結婚というものに踏み込むには躊躇するだろうし、かといって大切にしたい女性をそれに付き合わせるわけにもいかない。
だったら始めから深みにはまらないよう、女性と親しい関係にならなければいい、そう考えているのだが。