敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
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暁斗の来期社長就任を前に、俺は秘書室長に就任した。
重役の中には俺が社長の息子であることを知る味方もいたが、大半はこの異例の抜擢を訝しげに思っていることだろう。
だが彼らはすぐには異議を唱えない。
一体どんな経緯があるにせよ、室長に就任した俺という人間の力量をはかり、味方につくか敵になるかを見極める時間を置くのだ。
俺としては自分の能力を試され、品定めされていることに心地よい緊張感を覚え、これまでになく充実した日々を送っていた。
そんな時、俺はある場面に遭遇する。
重役の執務室があるフロアで目にしたのは、愛人を秘書にした挙げ句、妻に不倫がバレて秘書を切った専務と、秘書室で最も若い神田七海の姿。
エレベーターから降り立ったばかりの俺の存在には二人とも気付いていないようだ。
「いやー、本当にありがとう。挨拶のスピーチで空気が和んだおかげでその後の商談がすんなり進んでくれたんでね。あれ、色々調べてくれたんだろう?」
「いえ、とんでもございません。スピーチの原稿は道具に過ぎません。全て専務のお力と、お人柄が成せた結果だと思います」
「はは、逆に褒められてしまったな。だが君のセンスは本当に素晴らしかった。次もよろしく頼むよ」
「はい、私でよければお申し付けください」
彼女は優秀な秘書達の中で唯一平凡と思われる可もなく不可もない、俺の総合的な評価としては5段階の3に満たない秘書だ。