敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
フラれたばかりなんです、とか言われたら逆に気を遣うだろうと気付いたのは言ってしまった後で。
「あの、なんかすみません。私変なことばかり言ってしまって……」
そう言って私は明日でも間に合う仕事は残して帰ろうと片付け始めたのだけれど。
「私は神田さんの表情豊かなところに好感を持っていますよ」
「え……?」
「作り笑い、というのは相手に打ち解けていない場合や、緊張などが表情を固くさせるのだと、私は思います」
「室長……」
「あなたが振りまく自然体の表情は、私にとっては憧れですよ」
無表情だし何を考えてるかさっぱり分からないと言われる室長。
だけど皆が業務の上で文句も言わず彼に従っているのは、室長が誰にでも同じ態度で公平に接し、指示も的確で変に媚びたりしない、誠実なところを評価しているからだ。
そんな人にかけられた真摯な言葉は、真っ直ぐに私の心の中まで入ってきて。
「……っ」
「……神田さん?すみません、気に障りましたか?」
「……いえ、違うんです……。室長にそんな風に言ってもらえると思ってなくて……。嬉しくて泣きそうなんです」
自分でもどうしてこんなに泣きそうなぐらい嬉しいと思うのかわからない。
だけど作り笑いとか嘘くさい笑顔と言われて、少なからず落ち込んでいたから。
こんなことで泣くなんて、と思うも涙がじわじわと溢れてしまい、堪えようとしてもどんどん視界が潤んでいく。