敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「……まあ、それも当分おあずけだろうな。佐伯さんの件で、俺はたぶん忙しくなる」
「そうなんですか……。それって……、あ、いえ、何でもないです……」
それは佐伯さんが社長の特別な人だからですか?
と訊きたかったけど訊かなかった。
社長と佐伯さんに何かあるのは知っているけど、詳しい話は言いたくなさそうだったし、人のプライベートに興味を持ちすぎるのは良いことではないと思うから。
「……いつか、君に話すよ」
そう言って室長は目を細めて微笑み、私の頭を撫でると執務室へ戻っていった。
結局、佐伯さんのことはいつものごとく上手くはぐらかされたということになるのだろう。
けれど、以前は訊いてもはぐらかされて終わっていたことを、いつか話すと言われたことは私にとっては喜ばしい進展だった。
室長が私を受け入れてくれている、そんな実感が湧いてきてよくわからない室長が少しわかるような、そんな自信が持てるようになっていた。