敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「困らせるのが好きだって、言ったと思うけど?」
「っ、せ、性格悪いですよ……!」
「ははっ、確かに良くはない」
「そうやって開き直って……、あ……」
キャビネットの扉に置いていた手に大きな手が重なる。
みんな外出していていないけど、誰かが戻ってきたらこんな近くで寄り添ってどうしたの、と聞かれるに違いない。
だけどそんなことは気にする様子もない室長はそっと指を絡めてくる。
手を繋ぐなんていう初歩的な触れあいなのに、私の中の、中々二人で会えないという可愛いげのない不満の芽が摘まれていく。
「……もう少ししたら、ゆっくり休める。そうしたら、どこか行こうか。二人で」
「えっ」
「嫌なのか?」
「そ、そうではなく……」
「こっちはずっと触れてないから不満なんだが。君は平気? 寂しくないの?」
「そ、それは……」
「どうかな、七海」
「ま、また、このタイミングですか……!」
「名前で呼ばれたぐらいでそんなに焦るって、可愛いな」
「はっ、はあ?」
どんな顔でこんなこと言ってるのかと気になってそっと顔を上げる。
するとそこには見たことないほど優しい微笑みがあって。
目が合った瞬間心臓が止まった。