敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
こういうやり取りができるようになったのも距離が近付いている証拠だと思うと嬉しくてたまらない。
「こんなオジサンと一緒じゃつまらないかもしれないが、一応時間潰しになりそうな場所は考えてあるんだが」
室長は開いていた手帳を閉じて再びカバンに納めながら私にそう告げる。
「えっ、そうなんですか」
「君が喜んでくれるかはわからないけど。まあ、行こうか」
室長はさっき掛けたばかりのコートを羽織り、私を促しドアへ向かう。
一端コートを脱いでいたということは、会食をすっぽかす気があったというのはあながち嘘ではないのかも。
どこへ向かうかはわからないけど、室長が「たぶん君は喜ぶところ」と言うので、私にとっては楽しめるところだと思う。
というかどこだろうと室長と二人なら楽しいに違いないのだろうけど。
「七海」
「あ……、はい……」
部屋を出てエレベーターを待っていると、室長が手を差し出してくれた。
一瞬人目につく、と躊躇したけどここは大阪。私達を知ってる人なんていないのだ。
差し出された手を取ると、当然のように指を絡める繋ぎ方をされた。
堂々と外でこんな風に手を繋ぐなんてどこかくすぐったくて、チラッと室長を見上げると余所行きの顔をしているくせに耳朶が少し赤くなっているのが見え、いとおしさが倍増してしまった。