敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「……本当に、もう探しませんよ?」
私には室長だけ。やや上目遣いでおそるおそる様子を窺いながら、そっと隣に座る室長のコートの袖口をきゅっと握った。
「……ああ。いいよ」
そう言って室長は私の頭を引き寄せ、おでこの上辺りに軽く唇を落とした。
「今の、あと5分早く言われてたら会食はドタキャンだったな」
室長がぽん、と私の頭を撫で目を細めて優しく笑う。
「っ……」
極上の笑顔を目の当たりにして、室長じゃないけど今すぐ触れてほしくてたまらなくなる。
けれど無情にもタクシーは速度を落とし、延々と続いた白い壁が途切れ生け垣に変わった辺りの道沿いに止まった。
生け垣の先には質素だけれどいかにも高級感漂う門構えがあり、タクシーを降りた室長は慣れた様子で門をくぐる。
室長のあとについて古風な趣の石畳の小路を進むと、会食の場である料亭が見えてきた。
「なんかちょっと緊張してきました……」
「はは、そんな必要ないのに」
緊張する私をよそに、室長はいつも通り堂々としていて、背筋をピンと伸ばし颯爽と歩く姿にただただ見惚れる。
どう考えても私と室長じゃ釣り合わないのに、室長は私を可愛いと言って甘やかす。