敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「いやー、そうか、薫くんも最近はおとなしくしとるのか。まあ確かに昔より遊びにくいご時世よの。すぐ慰謝料だなんだと言ってくる」
そう言って水のように冷酒を口に運びながら上機嫌の会長が仰る。
本社は大阪だけれど、元々の出身は違うらしくガツガツの関西弁はお使いにならないとのこと。
「私は会長の足元にも及びませんよ。会長は昔、毎日違う女性をお連れだったと伺っていますよ」
親しいとはいえ、会食というからにはもっと堅苦しい場を想像していたのに、ほとんど親戚の飲み会のようになっている。
会長はいつも室長の女性関係についての話を聞いていたらしく、今回も新しい話が聞けると楽しみにしていたそうだ。
けれど今回は私も同席しているし、何より立場が変わったので控えており、浮いた話自体がないと説明すると会長はあからさまにがっかりした様子だった。
「じゃあ神田さんはどうじゃ? こんなに可愛いお嬢さんがそばにおるのに何もないわけなかろう?」
そう言ってほどほどに酔いの回っている会長が当然とでも言いたげに室長に問いただす。
普通に考えれば部下なのだから何もないと考えるのだろうけど、会長は室長のことだから、と考えたのかもしれない。
「……ありませんよ。彼女は部下です。僕も遊びで近くの人間に手は出しませんよ」
室長は私へちらっと視線を向け、淡々と説明したけれど、既に半分手を出されたような状態である私には、遊びではないと言われているようで嬉しかった。