敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「神田さん、慎太郎の嫁になる気はないかね」
「え?」
会長の仰る意味がすぐには分からず、一瞬呆気にとられてしまった。
けれど私の返事を待つ会長の顔は冗談を仰るような表情にも見えない。
そう思った時、思わず隣にいる室長へ目を向けてしまった。
すると、室長はなんら動揺した様子もなく私を一瞥すると会長の方へ視線を移した。
「会長、神田が抜けてしまうと我々も優秀な社員を失うことになりますので……」
もしかして私達の関係を話すのかも、と心のどこかで期待してしまったせいで、優秀な社員と言ってくれたにも関わらずがっかりしている自分がいる。
いつからこんなに欲張りになったのか。
室長は立場もあるのだから、そう易々と私との関係を公にするはずがないのに。
「それはそうかもしれんが……っ、グッ……」
突然、会長が苦しげに咳き込み、隣にいらっしゃる常務も心配そうに会長の様子を窺っている。
「だ、だい……じょう……、ゴホッ……ぐ……っ」
「おじい様しゃべらないで下さい。咳が止まらなくなります」
至極冷静に会長の背中を擦りながらそう仰る常務は、まるでこうなる可能性も合ったことを知っているような口ぶりだ。