敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
会長の顔は酔われて赤くなっていたけれど、更に赤みが増し、額にはうっすらと汗も浮かび始めていて、かなり息苦しそうにしている。
苦しそうにしている姿を見ているだけでは心苦しく、私は席を立って常務とは反対側の会長の隣に移動してお背中へ手を添えた。
「すみません、神田さん」
「いえ、こんなことしかできませんが……」
常務と代わるように今度は私がお背中を擦り始めると、会長は私の方を見て「すまない」と仰りたいのか目を細めて軽く頷いた。
「慎太郎くん、会長は体調が優れなかったのかい?」
「はい。数日前から風邪気味で……。昨晩から咳が出始めていたのですが、どうしても行きたいと言ってきかないので……」
常務は申し訳なさそうに目を伏せそう話すと、会長は掠れた声を振り絞って「すまん」と呟いた。
それから常務は席を外され、いくつかおしぼりを手にして戻って来られた。
体調次第では早く帰ることも想定していたそうで、迎えの車もすぐに来るよう手配したとのこと。
室長はそれを聞いてお店の方へ会食を切り上げる旨の説明のため席を離れた。