敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
お見舞いに行った時、弱気な室長が呟いた子供の頃の話に泣いてしまったり、おかゆを失敗して笑われたり。
あの時の私は自分の気持ちに素直に行動していたような気がする。
自分をよく見せようと背伸びもしてなかったし。
「ゴホゴホッ……」
この短い時間にもう何度目かの重々しい咳込みに、私の我慢は限界を迎えた。
「室長、ちょっと失礼します……!」
「っ……!」
室長の前に立ち、背伸びをして形のよい額に伸ばした掌に感じる熱は、思っていた通り少し熱かった。
それよりも室長に触れた瞬間、そこから湧き出るかのように私の体に走った熱の方が熱いんじゃないかと思った。
本気で嫌がられたらどうしようと思っていたけど、意外にも室長は初めておでこに触れたあの時と同じようにあっけにとられたような、明らかに「鉄仮面」の時には見せない顔をしている。
「やっぱり熱ありますよ。珍しいですね。こんな短期間で何回も風邪ひくとか」
「別にこれぐらい大したことない」
このタイミングでエレベーターが到着して二人で乗り込んだけお互い無言で、室長が一瞬見せた動揺はもう見えず、室長はまた上司の顔に戻っていたけど。
私の胸はまだドキドキしたまま。
久しぶりに素の室長に触れて、自分が誰を想っているのかを思い知らされてしまっていた。