敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
君じゃなくていいだなんてひどいことを言われたのに、私の中にはまだ室長が居座り続けている。
そして、おでこに触れた一瞬だけ目が合ったけど、私のこと、本気で嫌がっているようには思えなかった。
もちろん私の願望がそう思わせてるだけかもしれないけど。
でも、室長は、絶対嘘をついてる。
私じゃなくてもいいなんて。
私の悪口を聞いて怒ったり、シャンプーとボディソープを間違って余裕がないとか言ってみたり。
何より私を見て微笑むあの目が演技だったというのなら、私は喜んでだまされ続けよう。
「……室長、どうしても話したいことがあります。今日の帰り、いいですか?」
「……今日はかなり遅くなるが……」
「大丈夫です。待ってますので。では、後ほど伺います」
断る隙を与えまいと、私はそう言い切ってエレベーターを降りて振り向かずに歩いた。
心臓はバクバクと脈打ち、声が震えかけたけど、断られなかったことにはほっとしていた。
きっと待っていても室長は変わらない。
だけど、さっきおでこに触れたみたいに勇気を出してみたらーーーー、素直になってみたら何かが変わるかもしれない。
私の胸には淡い希望が芽生え始めていた。