敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~



就業時間を終えた秘書課。
メンバー全員が集まるのはそうあることではないけれど、今日は特別だ。


「社長、佐伯さん、おめでとうございます!」


秘書室を代表して阿川さんが大きな花束を佐伯さんに手渡す。


「みんなありがとう。でもまだ大々的に公表はしたくないからそこらへんは頼むね」


私が再び室長の婚約者になってから1か月後。
社長は佐伯さんとの婚約を秘書室メンバーにだけこっそりと公表した。
式はまだ先ということだったけれど、佐伯さんは秘書課からもともといた部署に異動になるということもあって、花束だけでも、と急遽決まった内輪のお披露目。

先輩たちが驚く中、知っていた私は別として、阿川さんも驚いた様子がなかったのはやっぱりどこかから聞いていたのかどうなのか。


「結婚式はどうなさるんです?」


興味本位というよりも社長のスケジュールを組む上で、といったトーンで阿川さんが社長に訊ねる。


「まだ先かな。ちょっと他に済ましておきたい人事もあるし、めんどくさい大人の事情があるからね……」


遠い目をしてそう答える社長を、佐伯さんは幸せ真っただ中といった目でうっとりと見つめている。
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