敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
私は未だに社長と佐伯さんの馴れ初めも知らないし、少し前に佐伯さんが会社を休むことになった一件についても知らないけれど、おそらくこれからそんな内輪の話も聞けるようになるのでは、と思ったり。
「さあ、ここから先は残業になります。それに社長と佐伯さんはまだ残るということなので、そういった意味でも早く退散しましょうか」
めずらしく室長がらしくないからかいを交えて皆にそう告げると、笑っていいのかどうか戸惑う先輩たち。
でも阿川さんは全く笑わず、華麗に会釈をして帰っていったけど。
で、社長と佐伯さん、室長、そして何かしら理由をつけて最後まで残った私の4人だけになった。
「薫、今日行くのか?」
「ああ」
「即答だな。んじゃ先に言っておく。おめでとう薫、神田さん」
「おめでとうございます、藤堂さん、神田さん」
おめでとうはそっちですよね?と聞きたくなったけど、曲者な社長はともかく、にこっと無邪気な笑顔の佐伯さんには何かたくらんだ様子はない。
「……どうして『おめでとう』なんでしょうか」
「いや、それは言えないけど。すぐにわかるよ」
「暁斗、余計なこと言うな」
「はいはい」
なんだろう。全く話が見えない。
おめでとうって言われても、婚約者に戻ったのはだいぶ前だし。
一体なんのおめでとうなのか。