敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

一体、何が起きたんだろう。
私が見たのは本当に室長なんだろうか。

室長があんなに軽くキスに応じる?
しかも颯爽とお持ち帰りされた?したの?
いや、どっちか知らないけど。
ないわ。絶対ないない。
私が見たのは室長じゃないわ。うん。

あり得ない光景を目にして、動揺と妙な動悸が収まらなかったけど、あれは室長じゃなかった、と考えると一番しっくりくる。

きっと見間違いだという結論に達したところでグラスも空になったので、私もお会計をと思ったけれど。


「お客様のお会計は藤堂様が済まされました」

「え?」


お会計を払ってくれたということは?
私がいたことを知ってたということで?
え?
なに、私がいるの知っててあんなコトして見せるの?
え、え、なんで?

頭の中は疑問符だらけ。
楽しい週末を迎える予定だったのに。

月曜日、室長に会ったら私は何を言えばいいのか。
ご馳走さまでした?
隠れててごめんなさい?
ああ、どっちも不正解な気がする。

もう、ホント、どうしよう。

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