敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

徐々に女性からのボディタッチが増え、私が触られている訳じゃないのにやたらとドキドキしてしまう。

そのうちお互いに耳元で囁くように会話し始め、室長は時折口元を緩ませて笑っているようにも見えた。

今日初めて見た室長の笑顔を、再びこの短時間の間に見られるとは思っていなくて、私のドキドキは既に限界を越え始めている気がしたその矢先。

その女性が室長の唇を掠めるように奪い、室長はそんな彼女の顎を掴み、お返しとばかりにキスをした。


「う、うそ……!」


思わず声にならない声で呟いてしまうほどに驚き、そして見てはならないものを見てしまったという動揺が半端なく押し寄せる。

普段の室長からは想像できない、一夜の恋を楽しむかのような姿がそこにある。

私が見る限り、知り合いではなさそうで、言わば逆ナンというものに他ならないと思う。

でもそんな誘いにあっさり乗っちゃう室長とか、ホント目の前の光景が全部夢だと言われた方が信じられる気がする。

動揺が収まらない私を尻目に、室長とその女性は席を立ち、店員さんに何かを告げて会計を済ませた。

そして女性が室長の腕に絡めるように腕を組み、テーブル席の一緒に来ていた他の二人に声を掛け、室長と女性はクスクスと笑いながらカウンターにいる私の後ろを通り過ぎて店の外へと消えてしまった。
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