敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

あとは私の署名だけの状態で差し出された婚姻届には証人の欄に既に母の名前が書いてあった。
なんでも昨日結婚の話をしに行ったんだとか。

薫さんは最後まできちんと式を挙げてから籍を入れようと思っていたみたいだけど、どうしても社長の結婚の方が先になるらしく、色々と考えた末に決めたと話してくれた。

ちなみに私が反対するとは1ミリも想定していなかったそうだ。

いや、まあ反対なんてするわけないけど。


「よし、それじゃ急ぐか」

「えっと、まだ何か?」


婚姻届は無事受理され、藤堂七海となった余韻に酔いしれていたけれど。
なぜか薫さんはまだ急いでいるらしい。


「何って……、子供が欲しいって、言ったよな」

「は……?」

「悪いが今更反対は受け入れない。今夜は寝かせるつもりはない」

「え、え」


全部がほしいって、もしかしてこのことだったのかな、と前髪をなびかせて歩く薫さんに手を取られ、早歩きというより小走りになりながら考える。

誰にも心を見せて来なかったのに私には包み隠さず自分を見せてくれる薫さんを見て、これからも一番近くで、彼が見せる初めての顔をみていきたい、そう思った。

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