敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「気を悪くしたなら謝る。でもあの時は本当に君が可愛いと思ったからついからかってみたくなったんだ。男の性(さが)だよ」

「お、男の性?それのどこが……」

「気になる子をいじめてしまうって話はよくあるだろう?」

「そ、それは子供の話じゃないですか!」

「はは、男はいくつになっても子供だよ。ま、そんなに怒らないで。とりあえず乾杯しよう」

「何に乾杯なんですか」

「そうだな……。秘密の夜に、とでもしておく?」


そう言って室長はそっと琥珀色のロックグラスを傾け、私のグラスに合わせて微かな音を鳴らす。

というか何飲んでるんだろう。
ウイスキーなのかな。
ロックグラスがまた似合いすぎてカッコいい、って思っちゃう自分がホント嫌だ。


「じゃあ本題に入ろうか」


グラスを置いた室長は静かにそう言うと、私の方へ視線を向けた。

私は反射的に何を言われるんだろうと構えてしまい、胃の中に重石が入っているかのような苦しさを覚える。


「先程聞かれてしまった通り、俺と暁斗……つまり社長は兄弟だ。と言っても腹違いで、まあこれだけならよくある話だろう?」

「よくある……、そうかも、しれないですけど……」

「でもうちはここから先がある。俺達の母親は姉妹なんだ。つまり俺と暁斗は兄弟でありながら従兄弟でもある」

「え?」


さらっとなんでもないことであるかのように室長はそう話すけど、よくよく考えてみると複雑な話だ。

仮に私に姉や妹がいたとして、その人たちが私の夫との子供を授かるということになる。

それって、生まれてきた子供同士は……、当の本人はどう思っているのだろう。

そこを考えてしまうと、私なんかが簡単に口を挟んだり出来ない状況であることが容易にわかり、やっぱり私が知るべきことではなかったと安易な自分の行動を後悔する。
< 40 / 282 >

この作品をシェア

pagetop