敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「わ……、なんか壮観ですね……」
先輩達の鮮やかな姿に圧倒されたのか、佐伯さんはため息混じりにそう呟く。
「そうだね、私もそう思う。私、いつもこの中にいると別な意味で浮いちゃうんだよね」
「えっ、そうですか?神田さんは皆さんの中に入っても目立つんじゃないでしょうか」
「いやいやそれはないよ」
「ありますよ!神田さんは声も仕草も凄く女性らしくて素敵だと思います」
「そ、そんなことは……」
「あります!まだご一緒させていただいた時間は少ないですけど、その中で何回も思いました」
そう言って佐伯さんは私を真っ直ぐな目で訴えるかのように見てくるし、媚を売るようなお世辞も言えそうには見えないので、本当にそう思ってくれてるのかと嬉しくなった。
それから皆でエレベーターホールに向かい、開いた先に乗り込もうとした時。
「あら、誰か鳴ってない?」
阿川さんがそう言うと、皆が一斉にバッグの中の社用のスマホを確認する。
金曜の夜は急な接待や、急ぎの対応が入ることも少なくない。そんな背景もあって秘書室のメンバーは終業時間と共にさっさと帰ることが多いのだ。
「誰か呼び出し?」
阿川さんの問いに皆が首を横に振るけれど、わずかなマナーモードの振動は絶えず耳に届いている。
しかも、それは不運なことに私のバッグの中から聞こえているようで、皆の視線が続々と私へ向けられていた。
「あ……、私の、私用です……」
バッグの中の私用のスマホを手に取って、ディスプレイに表示された室長という文字にドキッとする。