敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「あの……、佐伯さんのバッグとか、私が持ってきますね」

「いいの?」

「はい。具合悪そうだから帰した、ってことにしておきます。たぶん、剣崎さん細かいこと言わなそうだし」

「……ごめんね。色々気を遣わせてしまって。もし剣崎が余計なこと言っても、君は何も知らないフリしていいからね。何か困ったら薫に言えばいいから」

「はい、わかりました。じゃあ私、取ってきますね」


そう言って社長を残し、私は店の中へ入った。

まだ曖昧で、私の予想でしかないけれど。
たぶん、佐伯さんを大事にしているのは社長だ。
室長は社長の代わりに私に彼女を見守ってと頼んだだけ。

室長の大事な人というわけじゃないんだ。
そう思うとモヤモヤしていた心の中の黒い影がすうっと消えていく気がする。

席へ戻ると、まだまだ盛り上がっていて、先に戻っていた剣崎さんも何もなかったかのように先輩達と楽しげに話している。

佐伯さんはどうしたの、と阿川さん辺りが訊いていそうだけど、剣崎さんはなんて答えたんだろう。
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