敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「阿川さん」
「あっ、七海ちゃん。佐伯さん具合悪いって聞いてるけど大丈夫なの?私が行きましょうか」
「えっ、あ、はい……、その、帰った方がいいかもっていう話になって、佐伯さんのバッグを取りに来たんです」
「あら、そう……。そういうことなら私が行くわ。誘ったのは私だもの」
「いえ!大丈夫です。阿川さんはここにいらした方がいいかと……」
剣崎さんはどうやら社長のこととか余計な話はしていないようだった。
それなら、と私は心配している阿川さんに佐伯さんを帰らせる話をして、私がタクシーに乗せますと告げてから佐伯さんのバッグを持って外に出た。
するとすぐそこにいたはずの二人の姿が見えず一瞬戸惑ったけれど、少し離れた所に停車した車が目に入る。
運転席には室長がいて、後ろの座席のドアを閉めた社長がこちらへ向かって来ていた。
たぶん後ろの座席では佐伯さんが寝ているのだろう。
「社長、これです。お願いします」
「ありがとう。悪かったね、色々迷惑かけちゃって」
「いえ、大丈夫です。気にしないでください」
そう言って私が佐伯さんのバッグを手渡すと、社長は微笑み車へ向かいかけたけど、何か思うことがあったのかこちらを振り返って、また私のそばへやって来た。