敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「は、はい……、待ち合わせです……たぶん……」
「たぶん……?」
「い、いや、待ち合わせ、です……」
ロックグラスを傾けながら、室長はすました顔をして話し続ける。
醸し出す雰囲気があまりにも艶めいていて、ちらりと流し目を送られるだけでドキドキしてしまう。
「……待ち合わせって、誰と?」
「え?いや……、じょ、上司……で、っ……!痛い……!」
ぺちん、と室長の長い指が私の鼻先を弾く。
弾かれた鼻先を手で撫でながら、なんで?と目で訴えると、室長は少しご機嫌を損ねたようにふいっと目を逸らしてしまった。
「……上司じゃないだろう?」
「え、でも上司ですよね」
「それは間違いじゃないが今の質問の答えには適さない」
私にとって室長は上司であることに間違いはない。
ただ、私に好条件の素敵な人が見つからない時は室長が結婚してくれるという『保険』を提案してくれてはいるけれど。
正直なところそこが一番曖昧で謎だらけで信じがたくて自信が持てない。
キスされて迫られて求められても一時の気の迷いとしか思えないのだ。
信じてみたいけれど、私が一方的に溺れて終わってしまいそうで、自分が傷付く事が怖い。
それが現状。