敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

とはいえ、目撃者である私からすると、とにかく社長との関係が気になってしょうがなかった。

それは室長が意味深に佐伯さんを見守ってほしいとか言ったのが原因だけど。

それにしたって『美緒』とか名前を呼び捨てにして、社長自らが迎えに来るのだからただならぬ関係であることは間違いない。

ただ、それを室長に聞こうとすると、有無を言わさず質問出来ないように何度もキスされるので聞けずじまいになっていた。


「……電話しかないって……」


エレベーターを待つ間スマホの画面をじっと見つめながら、しばらく室長とまともに話せていないことについて考えていた。

そもそも電話以外の連絡手段がないとか不便すぎる。
電話をかけても怒りはしないだろうけど、かけて何を話すのか、というところもある。


「お疲れ様」

「あ……」


社食でランチにしようとホールでエレベーターを待っていると後ろから声を掛けられ、振り向けば室長が立っていた。

今まさに室長のことを考えていたので、声を聞いた瞬間ドキッとしてスマホを落としそうになった。


「今から昼?」

「はい。室長、戻られてたんですね」

「ああ。朝イチの便で帰ってきた」


こんなに間近で室長を見るのは久しぶりだったけど、相変わらず整いすぎの顔立ちに改めて見惚れる。

ふわっと香る室長の匂いにさえ敏感に反応してしまう自分に笑ってしまう。

いつからこんなに室長のことが気になるようになったんだろうかと。
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