俺がきみの一番になる。

バスが来るのは十分後で、それほど人は待っていない。

前にここに来た時は、草太と一緒だったっけ。

あの時は夏休みだったから、かなり前のことになる。

懐かしいなぁ。

ぼんやりしていると、バスはすぐにやって来た。

バスに乗ってICカードをかざすと、一番後ろの席へと腰かける。

お客さんはたったの数人だけで、終点に向かうのは私だけ。

バスの運転手さんにお礼を言って降りると、山あいのせいか外はすごく肌寒かった。

カバンの中に入れた上着を取り出し、それを羽織る。

ううっ、もうちょっと分厚い上着にすればよかった。

さっきまですごく暖かかったから、余計に温度差を感じる。

でもまぁ、仕方ないよね。

諦めつつも、少し歩くと広場があって、そこからは綺麗な景色が一望できた。

「うわー、綺麗!」

夏に来た時とはまたちがって、木々の葉が黄色く赤く色付きつつあった。

ザワザワと風で葉っぱが揺れる音に耳を澄ませる。

うーん、やっぱり自然っていいな。

エネルギーに満ち溢れているというか、パワーがもらえるような気がする。

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