俺がきみの一番になる。
ねぇ、本田君。
こんな私のどこがよかったの?
いくら考えてみても、好きになってもらえる要素なんてひとつもない。
ふつふつとした疑問を胸に抱えながら、ひたすら手を動かした。そしてようやくプール掃除が終わったのは、それから四十分後のこと。
あたりはオレンジ色に染まってすっかり夕方になっていた。
「おつかれ」
日陰で汗を拭っていた私の前に、本田君がやってきた。本田君の髪の毛や体操服も、同じように汗で濡れている。
体操服の袖を肩までめくり上げ、しなやかな筋肉がついた腕があらわに。さすが野球部なだけあって、力強そうな腕をしている。
さらには、体操服を掴んでお腹に風を送っている本田君の腹筋は綺麗に割れていた。肩幅もがっしりしているし、見た目はまったく子どもっぽく見えない。
「おつかれ様」
「ナベちゃん先生がジュース奢ってくれるって。なにがいい?」
「わ、やった。ちょうど冷たいのが飲みたかったんだよね。えーっと、緑茶がいいな」
「うん、じゃあ一緒についてきて」
「え?」
買ってきてくれるんじゃないの?
「俺一人で全員分は持てないからさ」
「そっか、そうだよね。一人では無理だよね。わかった、手伝うよ」