俺がきみの一番になる。

特に断る理由もなかったから頷いたんだけど、なぜだか高木君も一緒についてきた。

「なんで拓也までくるんだよ」

「いいだろー、俺だって亜子ちゃんと話したいんだから」

「なにを話すことがあるんだよ」

「それは、まぁ色んなこと。草太のこととか、草太のこととか、草太のこととか! たまーに俺のことも。あ! あと、亜子ちゃんの身長がどうしてそんなに低いのかってことも」

「なんだよ、それ」

思わず苦笑いを浮かべる本田君。私まで笑ってしまった。高木君はユーモアがあるから、会話が弾んでとても楽しい。

三人で並んで廊下を歩いていると、ふとどこかから突き刺すような視線を感じた。

振り返った瞬間、遠くからこっちを見ている沢井さんと目が合った。沢井さんは女友達数人と話し込んでいる。私を指差しながら一人の子になにかを耳打ちすると、そこにいたみんながつられるようにしてこっちを見た。

心臓がヒヤリと冷たくなる感覚がした。

ヒソヒソとなにかを言ってクスクスと笑われる。でも、沢井さんだけは私を睨んでいた。

それは気分がいいものではなく、なんとなく居心地が悪くて。うつむきながら歩いた。

「ん? どうかした?」

私の目の前に本田君のドアップが。下から覗き込むようにして顔を見られる。

「な、なんでもないよっ」

そうは言ったものの、モヤモヤして落ち着かない。

「なんかあるなら言えよ?」

「なんでもないってばー!」

笑ってごまかしたけど、本田君には見抜かれていたらしい。

「柳内さんの場合、そう言う時は、絶対なんかあるんだよ」

ちょっとしと心の変化を敏感に察知する本田君はすごいと思う。だからこそ、絶対に知られたくない。

こんなこと、言えないよ。
< 64 / 256 >

この作品をシェア

pagetop