俺がきみの一番になる。

え?

いや、でも、そんなはずはない。

あ、誰かの席にまちがって座っちゃった?

キョロキョロと辺りを確認してみても、そこはやっぱり私の席で。

えーっと、待って。もう一度落ち着いてよく考えてみよう。いつも机の中にある教科書やノートが全部ないなんて、きっとなにかのまちがいだ。

そう思ってもう一度今度は机の中を覗き込んだ。だけどやっぱり中身は空っぽ。

「な、なんで?」

どうなってるの?

もうこれは明らかに故意で誰かがやったとしか思えない。上履きのことも、もしかしたら誰かに隠されたのかも。

誰がこんなこと……。

ショックでしばらく動けなかった。気づくと予鈴が鳴っていて、もうすぐ授業が始まろうとしている。

「柳内さんってば。何度も呼んでるのに」

ぼんやりしていて、隣の席の南野さんに呼ばれていることにすら気づかなかった。

「おはよう、南野さん。ごめんね。どうしたの?」

こんな時なのに笑顔が浮かぶ自分が嫌になる。気分が沈んでいるのを、誰にも知られたくなかった。

「スリッパ履いてるから、どうしたのかなって」

「あ、えっと……」

ど、どうしよう。

本当のことなんて言えない。

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