俺がきみの一番になる。
「こ、これは……あの、その」
なんとかごまかそうとしてみるけど、言っているうちにだんだんと表情がこわばっていくのがわかった。
南野さんは小説片手に私を見ていて、どうやら心配してくれているらしい。
ダメダメ、こんなんじゃ。
南野さんに迷惑かけちゃう。
「もしかして、誰かに?」
「ううん、そんなんじゃないよ! だ、大丈夫だから」
「ほんとに?」
疑うような目で見てくる南野さん。そりゃそうだよ、上履きがなくなるなんて明らかにおかしいもん。
「じ、実は上履きだけじゃなくて、教科書も全部ないの」
「え、なにそれ。誰かにやられたってこと?」
「あ、でも、亜子の勘違いかもしれないし。そのうちどっかから出てくるかも!」
なるべく明るく気を遣わせないように言った。
「どっかからって、なんでそんなに楽天的なの。出てこなかったらどうするの?」
「そ、それは……どうしよう」
教科書やノートがないのはとても困る。でも、南野さんの言い方は少しきつい、かも。
楽天的って、そんなつもりはないのになぁ。グサッときちゃったよ。
「仕方ないね。教科書がないんじゃ困るでしょ?」
そう言って南野さんは机を私のほうに寄せてきた。どうやら、教科書を見せてくれるらしい。
「あ、ありがとう」
言い方はきつくても、南野さんは優しい人だ。