俺がきみの一番になる。
少し速足になりながら、踊り場を通り過ぎた。そして渡り廊下を通って、別棟にある音楽室へと向かう。
まだ心臓がドクドクいってる。手を当てなくても拍動が伝わってきて、脇や背中にへんな汗が浮かんでいた。
やっぱり、スリッパや教科書も沢井さんたちの仕業……?
だってほかに考えられない。
私が本田君と仲良くしてたから?
私が悪いの?
じゃあ、どうすればいいの?
どうすればやめてくれる?
本田君と仲良くしなければ、やめてくれるのかな。
心がぐちゃぐちゃで、もうなにも考えたくない。気分は沈む一方で、そのあとの授業はほとんど頭に入ってこなかった。
「柳内さん」
音楽室から教室へ戻る途中、後ろから名前を呼ばれた。振り返らなくても、それが本田君の声だってことはすぐにわかった。
「あ、えっと。どうしたの?」
振り返り、キョロキョロと辺りを見回して、沢井さんがいないことを確認する。誰がどこで見ているかわからないから、すごく慎重になってしまっている。
「なんかあった? 今日、ずっと上の空じゃない?」
そんな私を心配そうに見つめる本田君。
「ううん、なんもない。なんもないよ!」
強調するため、同じ言葉を繰り返す。