俺がきみの一番になる。
水はかぶっていないけど、胸が押しつぶされそうなほどギュッと痛む。
「今度はこれなんかどう?」
「あはは、いいね! 面白そう!」
パチパチと手を叩きながら、楽しそうな声。それは沢井さんの声だった。
こんなことをして、なにが楽しいの?
どうして、笑っていられるの?
胸がカーッと熱くなる。だけど今の私には、なにもできない。そんな勇気もない。
下を向いたまま身動きが取れずにいると、誰かが走ってくる足音が聞こえた。
「柳内さん!」
え?
「危ない!」
いきなり腕を掴まれたかと思うと、思いっきり引き寄せられた。頭の上から覆いかぶさるようにキツくギュッと抱きしめられる。目の前が真っ暗で、なにも見えなくなった。
次の瞬間、なにかが落ちてくる小さな音がした。「いてっ」と耳元で誰かが声をあげる。小さなものがたくさん転がり落ちる音。
なにが起こっているんだろう。わからないけど、全然痛くないのは守ってくれているから。分厚い胸板にがっしりとしたしなやかな腕。この温もりには覚えがある。
「本田、君?」
「大丈夫か?」
少しも腕の力をゆるめることなく、そう聞いてくれる本田君。
「は、離して」
「嫌だ」
熱い吐息とともに吐き出される声にドキッとする。さらには腕の力を強めて、隙間がないくらい密着してくる。
「ほ、本田君……」